しろうとcollection
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《Today's tune》

25/10/09 09:37

《Today's tune》

「あの人に遺したいから書いてほしい」


じいちゃんが、じいちゃんの彼女さんに
私の書で作品を贈りたいらしい


和紙を貼った小さなキャンバスを挟んだイーゼルが
広い庭の真ん中にポツンと立っていた


離れた縁側に腰掛けたじいちゃんに凝視されながら
一文字に筆を執る


じいちゃんの思いが、私の腕にずっしりと憑依して
なぜか、いつも通りに書けなかった


せっかく用意していた金箔入りの水色和紙が
台無しになってしまった


今度は、真っ白な和紙を貼ったキャンバスを差し出された
じいちゃんと想いと、私の身体を上手く一体化できた
どうやら形になったらしい


ちょうどそこへ、彼女さんが現れた
じいちゃんが完成した書を見せながら静かに言う


祖父「◯◯
(彼女の名前)、これワシの気持ちじゃ。」
彼女「あら、綺麗だねぇ。◯さんありがとうね。」
祖父「今度はワシの番じゃ。次はアンタの番じゃ。
急がんでええ。ゆっくり来られぇ。」


その言葉を聞いた瞬間
何だか胸騒ぎがした


庭を立ち去るじいちゃんの背中を追うと
いつの間にか1本の線路と小さなホームが浮かぶ海にいた

( 千と千尋の神隠しで見た事があるような光景 )


ホームにとまっている電車には
じいちゃんだけ乗っている
ドアがなくて入れない


「じいちゃん、どしたん?どこに行くん?」


じいちゃんは進行方向を見つめたまま
何も応えてくれない


「お願い。やだ。待ってよ。一緒に─── 」


電車が動き出す
私はホームの先まで全力で並走して
咽び泣きながらじいちゃんを追い掛けた


海は浅く、水面の下に線路が透けて見える
飛び込めば追いつけると思ったのだが
海に足を踏み入れた瞬間、私は沈んでいった


涙も、海も、しょっぱくて
自分が泣いているのか、もうわからなかった









───そんな夢を見た





久々に泣きながら起きて
すぐにじいちゃんに電話をかけた








私が小学生の頃
祖母が末期の癌で入院していた時
私が長半紙に書いた『ありがとう』という書を
病室に貼っていて、お見舞いに来た人たちに
「これ私の気持ち」と指差しながら
嬉しそうに言っていたらしい








怖くて綺麗な夢の残像が
まだ脳みそにこびり付いてる





ふみ
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天国 / Mrs. GREEN APPLE

( まさにこの曲 )