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駆け込み訴え

26/10/11 09:13

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駆け込み訴え
駆け込み訴え

 

まるで小劇場の演劇を最前列で観たかのような臨場感、迫力。そういったものがユダの人間臭さとともに文章から飛び出てきたのかと錯覚しました。

 

『駆け込み訴え』は、太宰治による短編。

イエスキリストを裏切ったユダが、役人に向かってキリストの罪や悪口を捲し立てる内容になっております。

 

約13,000字にわたって書かれる、ユダのキリストに対する愛憎は、屈折した感情でありながらも極めて人間臭く、目を離せず一気読みしてしまいました。

 

愛するがあまりに、その感情が反転してしまうのはなぜなのだろう。そう考えてしまいますが、その考え自体がナンセンスなのかもしれないとも思います。

 

愛と憎しみは光と影のようにセットになっていて、人は理性で汚い部分(憎しみ)を隠そうと必死なのかもしれません。

 

それでも理性は必要なものだと思います。

他人に対してどうとか、そういう綺麗事ではなく、自分のために必要だと思うのです。

自分の大切な人を、自分の感情で傷つけてしまった時に後悔するのは自分自身だからです。

 

まさに『駆け込み訴え』の世界は、愛憎の言葉を生々しいまでの切れ味と迫力で文章化されたものなのであると感じてしまいます。

 

しかしながら、憎しみ=悪として説教する内容ではありません。

 

太宰ならではの、人間を人間として認めるかのような、そんな感情も、まるごと飲み込んでしまうかのような筆致は、彼の真骨頂なのではないかと思うのです。

 

素晴らしい作品でした。

安易に再読できないくらいには、心臓のバクバクとした音を無視できないほどに響き渡っています。

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